12.21.2012

【前回までの記事】

今日はアメリカにおける男女共同参画の歴史と現状、をお伝えします。

内閣府のワーク・ライフ・バランスのHPでは、欧米諸国(アメリカ、英国、ドイツ)における取り組みの報告書を読むことができます。

http://wwwa.cao.go.jp/wlb/overseas/index.html

これによるとアメリカでワーク・ライフ・バランスの ”改革” が起こったのは90年代初め。 

どういった改革かというと、仕事の再設計 です。

すなわち効率化、合理化することで生産性をあげ、かつ従業員の私生活も充実する。
そうすると、会社と従業員が Win-Win の関係となる! とあります。



アメリカ政府によるアクションの開始は2003年。思っていたよりも遅いです。

「仕事と家庭の摩擦を減らすことは国の優先課題(national priority)の一つであり、毎年10月を「全国仕事家庭月間」(National Work and Family Month)と定めるべきことを決議した」

とあります。
私アメリカ歴長いですが、この月間のこと知りませんでした。。。(恥)

決議は以下の項目の認識にもとづいています。


1. 仕事の質の向上と職場の支援は、労働生産性、仕事への満足度、雇用主への 忠誠心、そして優秀な人材の維持をもたらす鍵である。 
2. 仕事と家庭の調和策と欠勤率の低下との間には、明らかな関係がある。 
3. 働き過ぎの労働者ほど、失敗が多く、経営者や同僚に不満や怒りを感じ、新しい仕事を探す傾向が強い。 
4. 働き過ぎの労働者は、配偶者や子ども、友人との関係がうまくいかず、悲観的になり、健康的でなく、ストレスが多いと感じる傾向が強い。 
5. 85%の労働者が、仕事以外に、毎日の差し迫った家庭責任を有している。 
6. 46%の労働者が、少なくとも半日は一緒に生活をする18歳以下の子どもをもつ親である。
7. 仕事の柔軟性が増せば、働く親はより子どもとの関係を強めることができ、親との関係が強まれば、子どもの言葉や算数の理解向上、行動の改善、学習の持続性の向上、ドロップアウトする確率の低下が達成される。 
8. 親の仕事の柔軟性が不足していると、子どもの診察に同行できず、十分な初期治療を受けることができなくなり、ひいては子どもの健康に悪影響を与える。 
9. 国民のおよそ4人に1人(4,500万人を超える米国民)が、昨年、家族や友人の看護の世話をしている。 
10. 働く親のほとんどは、自分の家族と過ごす時間をもっとほしいと思っている。 
11. ベビーブーマーが引退年齢に差し掛かりつつあり、ますます多くの国民が親の介護の必要性に迫られている状況にある。

長時間労働が美徳とされている、古いタイプの日本企業にお勤めの方には痛い内容ではないでしょうか。

この認識は山口教授や、他の社会学者の研究成果に基づいている思うのですが、 
これを読むと なぜ米国企業が 家族支援 をする理由がわかるとおもいます。

端的にいうと、私生活がハッピーな労働者ほど、生産性が高くなるので、企業としても嬉しいからです。



   *******



アメリカでは、家族 がまるで 水戸黄門の印籠 がごとく壮絶なパワーを持っています。

仕事の交渉で、家族を持ち出すことも多々あります。
自分の夫あるいは妻、の仕事の斡旋もして! と堂々とリクエストし、交渉しています。

そしてここシカゴ大学では、なんとファカルティ(大学の教授・助教授)になると、子供の大学費までシカゴ大学が払ってくれます。シカゴ大学以外の大学に子供が行くことになっても、シカゴ大と同程度の授業料までなら出してもらえます。

ちなみにシカゴ大の年間授業料。いくらだかご存知ですか?

約4万ドル。日本円にして約340万円です。(高!)
アメリカの私立大学はやっぱり高いですね。
そのかわり、奨学金や学費免除といった財政援助もあります。

ファカルティの子供に対しては、大学費援助のほかにも、シカゴ大学付属学校(幼稚園から高校)の学費、約二万五千ドル(年間)が半分になります。

この付属学校は 実験学校 Laboratory School と呼ばれ、ジョン・デューイという教育者・思想家によって設立された、全米でもかなり有名な学校です。

あのオバマ大統領の子供も、オバマ氏がホワイトハウスに引っ越すまでは、この学校に通っていたそうです。


シカゴ大学付属実験学校
(写真はWikipediaより)

と、これだけ聞くといいとこづくしのアメリカ、と思われるかもしれません。
が、会社が雇用者をサポートする理由はあくまで 生産性 を上げるため。

終身雇用制度はなく、生産性が低い労働者、とみなされたらクビなので、皆必死です。
激しい競争をくぐり抜けていかなければいけません。

また、万が一クビになると、高額の健康保険料を自分で負担しなければいけなくなるので、大変です。

以前も書きましたが、アメリカでの自己破産のうち半分は医療費が払えないのが原因とされています。保険がないと、子供を生むのにも合計一千万円かかる国なのです。

また、昔ほどではないにせよ、黒人の方への差別はまだ根強く残っています。

このように問題は山積みのアメリカです。
それでも多様性という面ではかなり進んでいるし、オポチュニティ(機会)が多いので、外国人の私でも生きやすく、気づいたら約10年も住んでいます。


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2 件のコメント:

  1. 千葉県の真之だよ~。ゆーこねーちゃんのブログがマーリーのフェイスブックにリンク貼られてたから、見てるよ。色々勉強になります。
    銃の乱射事件は僕も3人の子供の親だけに、憤りを感じる。朝に送り出した笑顔が、冷たくなって帰ってくるなんて、考えられないよ。

    女性の社会進出の話は、日本には色々な問題があって、それを乗り越えないといけないよ。
    まずは核家族化。子供が熱だしたら、親しか病院に連れてけない。保険証を誰かに渡す訳には行かないから、親が行くしかない。そうするとやっぱり行くのは母親なんだ。どうしようもない。
    日本の仕事で求められるのは、早さ。客から早く見積もり、納品してって言われたら、急に休むことはできないし、いつ休むかわからない人に、重要な仕事は任せられない。完璧主義日本だからね。日本の社会がもっと家庭の事を重要視してくれる風潮にならなきゃ難しいと思う。
    子供を持ってる若者達がもっと強くならなきゃいけないね。でも若者の投票率は低い、政治に興味がないんだ。
    もっと若いリーダーがほしいよ。また自民党かよ…。
    日本の少子化問題は本当に深刻。このままじゃ日本は借金で沈没するよ。
    だからアメリカ、ヨーロッパの方がいい!ってはならないけど、日本が好きだけど、今の日本は残念でならない。
    なーんて不満ばっかりだけど、結構楽しく生活してるよ~。ゆーこねーちゃんも頑張ってね~!
    これからもブログ読ませてもらいます。
    長文すみません。

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  2. おお、真之君! 私のブログ読んでくれてありがとう! びっくりしたよ。
    そうだね、銃の乱射は本当に痛ましいし、NRA(全米ライフル協会)は非人道的だとさえ、個人的には思うよ。

    ちなみにアメリカは日本以上に核家族化です。
    高校までが親の責任で、大学からは自分の責任。
    親の仕送りなしで別々に住む、というスタンスも多い。

    日本の問題は、子育ては 母親、そして肉親(祖父母)がするものだ、という前提で
    システムが作られていることだと思う。そうすると、子供を持つ女性にとって、
    長時間労働、フィックスした時間の労働は無理だよね。

    あと、そうだねー。不必要なサービスやマニュアル、企業での異常なほどの数のミーティング、
    そういったのを省いたら、もっと仕事の効率も良くなるよね。

    政治家自身が、もっと家族を大事にする風潮を出したらいいのに、と本当に思う。
    こっちの政治家って、自分はこんなに家族を大事にしてるんだ!!! っていうのをある意味
    売りにしてるよ。

    確かに今の日本は大変だけど、食事は世界一美味しい国だと私は思うし、
    素敵な文化の国だと思うよ。

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