10.03.2012

チリのラス・カンパナス天文台。
右に見えるのが6.5mの双子のマゼラン望遠鏡。
私の所属するシカゴ大が共同運営しています。
天体観測で最も良く知られている場所といえば、ハワイ島マウナケア山頂。

日本が誇るすばる望遠鏡があることで、皆さんにも馴染みがあるかもしれません。そのハワイに並んで、いやもしかしたらそれ以上に今一番天文業界でホットなのが南米チリです。

でもなぜハワイ、そしてチリ? 






地球から観測する場合、大気のゆらぎがあるため、ハッブル宇宙望遠鏡ほど鮮明な画像を得ることは難しいのです。そのためなるべく空気が澄んでいて、大気が安定していることが地球からの観測の要になります。また空気中の水蒸気が高いと、天体からの光が吸収されてしまうので、乾燥していることも重要です。

地上からの観測はいわば、池に沈んだ100円玉を眺めているようなもの。
池の水が淀んでいたり、流れがあったりすると100円玉は見えにくくなりますよね。
けれど池の水(=地球大気)がきれいで安定していると、100円玉(=天体)も明瞭に見えます。

以上の条件を満たしていて、かつ、年間の天候がよい場所がハワイとチリなのです。

標高5,000mを超えるチリのアタカマ砂漠には、天文学に大きなブレークスルーをもたらしてくれると期待されている、アルマ望遠鏡が建設されています。またヨーロッパ14カ国ならびにブラジルが共同運営する、ヨーロッパ南天天文台(European Southern Observatory; ESO)の観測施設もチリにあります。

私の勤務先のシカゴ大は2年程前から、チリのラス・カンパナス天文台にある、6.5mのマゼラン望遠鏡の共同運営に携わっています。私自身は大学院がハワイだったため、観測といえばハワイ、だったのですが、今年2月初めて観測でチリを訪れました。

ラ・セレナの空港にて。
これからさらに2時間半、車で移動です。
シカゴからはチリまでの直行便がないため、テキサスやフロリダで乗り換えて、まずは首都のサンティアゴに向かいます。サンティアゴからは天文台に一番近い海辺の街、ラ・セレナへまた飛行機で移動。

ラ・セレナの空港では天文台までの運転手さんが待っています。これからさらに四輪駆動車で2時間半。
車内からの眺め
標高が高くなるにつれ、どんどん植物が減って行きます

観測施設に着くのはシカゴの我が家を出て丸一日後、といったところでしょうか。
私は観測の前夜に着いたので、体を慣らしたり睡眠をとる時間もあったのですが、ボスは観測当日に到着。ほんの少し仮眠をとっただけで観測に突入していました。ちなみに観測は夕方頃始まり、明け方近くまで続くので、移動時間を含めボスは丸二日ろくに寝ていないことになります。タフです。

日本からやってくる天文学者の場合は、さらに長い道のりなので移動だけで1日半。
乗り継ぎが悪かったりすると二日かかったりもするそうです。

綺麗な星空を求めて天文学者は旅するのでした。

3回目は観測室や宿泊施設などをお伝えします。




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