1.19.2013

先日の朝日新聞の記事に対する辛口意見ブログに対し、友人医者から個人的にコメントを頂きました。

「PSA検査自体は血液検査なので副作用もないし、医者としては末期癌の状態の患者を見るたびに、早期発見していたら、と歯がゆい気持ちになる。なので検査は大事だと思う。」


至極もっともな意見です。

私は検査をするな、と言っている訳では決してなく、PSA検査のように擬陽性率(癌でないのに陽性と出る確率)が高い検査の場合は、検査の前に医者からのきちんとした説明が必要で、検査を受けるかどうか最終的に決めるのは患者自身、という意見です。

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PSA検査はスクリーニングとして推奨しない、という結論に至った全米予防サービス・タスクフォース(U.S. Preventive Services Task Force recommendation 以降、USPSTF) に前回触れました。



USPSTFはなぜPSA検査を推奨しないという結論に至ったのでしょうか。
検査のメリットとデメリットは、こちらの論文にわかりやすくまとめられています。


 Screening for Prostate cancer: U.S. Preventive Services Task Force recommendation statement.
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22801674
Recommendation: The USPSTF recommends against PSA-based screening for prostate cancer (grade D recommendation). 
This recommendation applies to men in the general U.S. population, regardless of age. This recommendation does not include the use of the PSA test for surveillance after diagnosis or treatment of prostate cancer; the use of the PSA test for this indication is outside the scope of the USPSTF.
USPSTF はPSA検査による前立腺癌のスクリーニングを推奨しない。ただし、これはあくまで一般男性対象で、家族に病歴がある患者や、すでに前立腺癌と診断されている患者は対象外。

この論文によると、PSA検査と早期治療により助かる命は検査を受けた1000人のうち、1人か0人。

PSA検査で陽性と出た後に生体検査をし、癌と診断される人の数は1000人中110人。

そのうち癌の治療により深刻な心血管疾患になるのは2人。静脈血栓症あるいは肺塞栓症になるのは1人。29人が勃起不全、18人が尿失禁に生涯にわたって悩まされる。治療による死は1人以下。

また、スクリーニングをしてもしなくても、前立腺癌による死亡者の数は同程度。
(スクリーニングをした場合、前立腺癌による死亡者数は1000人中4−5人。スクリーニングをしなかった場合は5人。悪性の癌ほど進行が早いので、スクリーニングによる早期発見がいかに難しいかを語っている。)


この数値をどうとらえるか、が肝だと思います。


 *****


このUSPSTFの論文に反論する意見もあるし、私はこれが絶対正しいといっているわけでは決してありません。けれどメディアでPSA検査を勧めるのならば、その有効性だけでなく、リスクも報じるべきだと思うのです。

朝日新聞のこの記事では 「欧米では、、、」とまるで日本が遅れているかのように書かれていますが、その欧米では現在PSA検査のスクリーニングに対して疑問の声が高くなってるのです。国内メディアは海外の記事にも目を通す必要があるのではないでしょうか。




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